エステ開業資金のシミュレーション。借りる前に置く数字
監修:猪越理恵(サン・ティトル株式会社 代表取締役)

【結論】エステ開業資金とは、開業後の売上と毎月の経費をシミュレーションしたうえで、自己資金で足りない分を調達する金額です。
- 先に置くのは借入額ではなく、客単価・来店頻度・1日の人数・稼働日です。
- マニュアル上の理想は、施術商材原価10%未満、人件費45〜50%未満、広告5%未満です。
- 物件と機材は、この比率が成立する家賃と投資額の範囲で選びます。
この記事では、開業資金の総額だけを検索している人向けに、先に作る月次の数字を解説します。
エステ開業資金とは何か
エステ開業資金とは、内装・備品・商材・運転資金など開業時に必要な金額の合計です。ただし合計は、月次の売上と経費が決まらないと意味を持ちません。
売上側で先に決める項目
- トリートメント金額
- 客単価
- 理想の来店頻度
- 稼働目標(1日・1月の人数)
- 稼働日数
- 営業時間
- スタッフ数
毎月の経費の内訳
| 費目 | マニュアル上の目安 |
|---|---|
| 商材仕入れ(施術原価) | トリートメント設定金額の10%未満が理想 |
| 商材仕入れ(物販) | 目標販売金額に対する適正在庫を常に把握する |
| 人件費 | 総売上の45〜50%未満(社会保険料含む)が理想 |
| 広告宣伝費 | 新客かリピートかを分け、5%未満が理想 |
| 消耗品・手数料・衛生・保険・通信・水道光熱・家賃 | 詳細を事前に列挙する |

初期に並ぶもの
- 物件の家賃設定
- 導入予定の機材
- 初期商材(施術に使う一式)
- 初期備品(リネン、ベッド、衛生機器、カーテン、ワゴン、スツール、制服、カルテ、事務用品)
- リース(コピー機、プリンターなど)
本末転倒になりやすい例
数百万の機材を買い、一等地に店を出しても、ターゲット・客単価・稼働が未設定なら、収入と売上のバランスが崩れます。質の低い技術とサービスしか出せなくなる、とマニュアルは書いています。
調達はシミュレーションのあと
日本政策金融公庫や制度融資、補助金は、足りない分の調達手段です。返済と利息が月次の数字に載るかを先に確認します。詳細は資金調達の記事へ。
なぜ総額より月次を先に置くのか

開業資金の合計は、月の売上と毎月の経費が決まらないと意味を持ちません。マニュアルは、売上目標(トリートメント金額、客単価、来店頻度、稼働、稼働日、営業時間、スタッフ数)と、毎月の必要経費の詳細を先にシミュレーションせよ、と書いています。借入額と物件リサーチは、そのあとです。
一律の「エステ開業は◯万円」は出しません。機器の有無、家賃、雇う人数で変わります。ネイルの資金は席数と在庫の型が違うので、ネイルサロン開業資金に分けています。
一人店・雇用・自宅で、先に置く数字が違う
| 形態 | 売上側で先に置くもの | 経費側で忘れやすいもの |
|---|---|---|
| 一人店 | 自分が施術できる人数/日と、休みの日数 | 自分の生活費。人件費率の外に置きがち |
| スタッフを雇う | 人件費45〜50%未満(社会保険料込み)に収まる売上 | 助成金は後払い。初月の給与は自己資金か融資 |
| 自宅改装 | 家賃ゼロに見える分、規約で営業が止まるリスク | 工事、手洗い場、近隣対策。テナントより安いとは限らない |
| 機器を入れる | 1台あたりの回収月数(施術単価×回数−変動費) | 設置スペースとメンテナンス。メリットより先に回収を出す |
やる/やらない
| 判断 | やる | やらない |
|---|---|---|
| 原価 | 施術商材を設定金額の10%未満で試算する | 物販在庫を売上の代わりに数える |
| 広告 | 新客とリピートを分け、5%未満で上限を置く | 掲載料の未公開数字を記事に書く |
| 借入 | 月次に返済を載せてから申込む | 限度額いっぱいを目標にする |
| 機器 | 回収月数を出してから発注する | 一等地と最新機を先に決める |
よくある取り違え
- 自己資金が少ないから、先に助成金を取りに行く。雇用系助成金はスタッフ雇用が前提で、原則後払いです。詳細はエステ開業の助成金へ。
- 公庫の融資限度額(制度上、新規開業・スタートアップ支援資金は7,200万円、うち運転4,800万円)を、自分の必要額だと思う。限度は上限であり、通る額ではありません。
- 忙しい月=資金が足りている、と思う。人件費と家賃が先に膨らむと、技術と衛生への再投資が止まります。比率は経営指標へ。
シミュレーションのチェックリスト
- 客単価、来店頻度、1日人数、稼働日、営業時間が空欄でない
- 施術原価・物販在庫・人件費・広告・消耗品・決済手数料・衛生・保険・通信・光熱・家賃を列挙した
- 機器があるなら回収月数を書いた
- 借入があるなら元本と利息を月次に載せた
- 補助金・助成金を「先に入る現金」として置いていない
- ネイルの総額表を流用していない
次に読む理由
足りない分の調達手段は資金調達へ。比率の線だけを見たい人は人件費・原価・広告費へ。機器の可否は美容機器の導入判断へ。
売上側の計算を、空欄なしで置く
売上の骨格は、客単価×1日の人数×稼働日です。客単価は、代表メニューの価格ではなく、オフやオプションを含む平均で置きます。1日の人数は、営業時間÷(施術+入替+カウンセリング)で上限が出ます。稼働日は、自分が休む日と、繁忙の偏りを分けます。理想来店頻度は、メニューの持ちやホームケアの指導と矛盾しない周期にします。
スタッフ数を置くときは、社会保険料込みの人件費が総売上の45〜50%未満に収まる売上を逆算します。一人店は、自分の生活費を「人件費ゼロ」にしないでください。生活費が見えないと、借入の返済だけが正確に見え、手元が先に尽きます。
経費を費目ごとに拾う(マニュアルの列挙)
毎月の必要経費としてマニュアルが挙げるのは、施術商材、物販仕入れ、人件費、広告、消耗品、支払手数料(クレジット等)、衛生(クリーニング等)、保険料(火災/賠償等)、通信、水道光熱、地代家賃です。初期には、家賃、機材候補、初期商材一式、初期備品(リネン、ベッド、衛生機器、カーテン、ワゴン、スツール、制服、カルテ、事務用品)、リース(コピー機/プリンター等)が並びます。
物販は、目標販売金額に対する適正在庫を常に把握します。倉庫の商品は売上ではなく、現金の固定です。広告は新客とリピートを分け、5%未満が理想です。掲載料の公式数字が無い媒体は、金額を仮置きせず、人数目標から逆算できる上限だけを置きます。
借入額を決める前の検品
- 客単価×人数×日数が、空欄や「未定」になっていない
- 10%、45〜50%、5%の3線で月次を一度見た
- 機器があるなら回収月数の式がある(台数×単価の空想ではない)
- 返済を載せたあとも、広告と仕入れを切らずに済む
- 補助金・助成金を、初月の現金として足していない
- ネイルの席数表や、口コミの「開業300万」を使っていない
検品を通らないまま公庫の限度額(制度上の上限)を眺めると、必要額ではなく借りられる額が目標になります。調達の手段は資金調達で、この記事は必要額の出し方だけを厚くします。
初月の現金だけを別枠で置く
売上が立つ前に出るのは、家賃、初期商材、備品、保険料、自分の生活費、雇うなら給与です。初月を年平均の売上で割ると、足りているように見えます。初月は売上ゼロまたは少ない前提で、自己資金か融資の枠を分けて書いてください。リースのコピー機は月額を経費へ。補助金の入金予定は、初月の枠に入れません。
年額に伸ばす前に、12ヶ月の凸凹を見る
初月と閑散月と繁忙月を同じ売上で割ると、返済が閑散月に割れます。稼働日は休みと客が来ない曜日を分けます。スタッフ数は45〜50%未満に収まる売上の逆算です。初期備品とリースは初月の現金枠です。
- 閑散月を低く置いた
- 生活費を人件費ゼロにしていない
- 3比率を毎月見る
- 助成金を年平均に足していない
- ネイルの席式を使っていない
初月帳の作り方
12ヶ月表の1行目だけを、売上ほぼゼロで置きます。家賃、初期商材、備品、保険、生活費、雇うなら給与を足し、自己資金と融資のどちらで払うかをセルに書きます。2行目以降に、徐々に人数を足します。1行目に年平均を置かないでください。機器があるなら回収月数は2行目以降の人数でやり直します。
- 1行目は現金が出る側
- 補助金を1行目に足さない
- リース月額を経費へ
- ネイル総額を貼らない
- 返済は2行目からでも利息を見る
日次・週次・月次で手を動かす
チェックリストを壁に貼っただけでは、手が動きません。この記事の範囲だけで、日次・週次・月次に分けます。他記事の作業をこのカレンダーに混ぜないでください。
日次
- 使用量と手数料を正しい行に書く
- 生活費を人件費ゼロにしない
- 補助金入金を今日の現金にしない
週次
- 閑散日の人数を低く置く
- 初月帳の1行目を年平均で上書きしない
- 機器回収を総額の割り算にしない
月次
- 3比率を見る
- 返済と利息を載せる
- リース月額を経費へ
- ネイルの席式を貼らない
月次の最後に、空欄が残った行だけを翌月の一手にします。全部を同時に変えると、何が効いたか分かりません。
閑散月の行を赤くする
12ヶ月表の人数が低い月を先に赤くし、返済と生活費が載るかを見ます。全年を繁忙の人数で塗らないでください。1行目(初月)は売上ほぼゼロのまま残します。
- 閑散を低く
- 1行目は現金が出る側
- 3比率
- リース月額
- 補助金を1行目に足さない
ネイルの席式と、口コミの開業300万は表の外です。必要額は不足額の行だけです。
まとめ
開業資金の検索で必要なのは「相場の一発金額」ではなく、自分のコンセプトで回る月次表です。比率が崩れる投資は、しない判断が先です。
よくある質問
Q1. エステ開業資金とは何ですか?
開業時に必要な設備・商材・運転資金の合計です。月次の売上と経費のシミュレーションが先で、調達額は足りない分です。
Q2. 人件費の目安は何パーセントですか?
マニュアルでは総売上の45〜50%未満(社会保険料込み)が理想です。店の形態で前後します。
Q3. 広告費はどれくらいですか?
新客かリピートかを分けたうえで、5%未満が理想とされています。
Q4. 施術の原価率は?
トリートメント設定金額の10%未満が理想です。
Q5. いくら借りればよいですか?
一律ではありません。月次が回る範囲で、自己資金で足りない分だけを借りる、が手順です。
Q6. 機材は開業時に必要ですか?
コンセプト次第です。回収月数を出せない機材は、開業後に回します。
Q7. 物販在庫はどうしますか?
目標販売金額に対する適正在庫を常に把握します。売れない在庫は運転資金を食います。
Q8. 次に何をしますか?
数字が置けたら物件の家賃上限が決まります。並行して資格と届け出を確認します。
Q9. 開業資金に運転資金は含めますか?
含めます。初月の家賃、仕入れ、自分の生活費、雇うなら給与は、売上が立つ前に出ます。設備だけを合計しないでください。
Q10. リースのコピー機は初期に入れますか?
マニュアルはリース関連(コピー機/プリンターなど)を初期の検討項目に挙げています。月額を経費側に載せます。
Q11. 未経験でも同じ表ですか?
表の項目は同じです。稼働人数は、技術が安定してから置きます。未経験の揃え方は別記事です。
Q12. 一括の総額が欲しいです。
席数・家賃・機器・人数が違うため、一律額は出しません。この記事は先に置く項目を渡します。
Q13. 保険料は火災だけですか?
マニュアルは火災保険/賠償保険などを挙げています。金額の目安は書いていません。見積を取ります。
Q14. 制服は初期備品ですか?
初期備品の列挙に制服が含まれます。レンタルか購入かは月次の消耗で見ます。
Q15. 保険料は火災だけですか?
マニュアルは火災保険/賠償保険などを挙げています。金額の目安は書いていません。見積を取ります。
Q16. 制服は初期備品ですか?
初期備品の列挙に制服があります。レンタルか購入かは月次の消耗で見ます。
Q17. 開業資金に運転資金は含めますか?
含めます。初月の家賃、仕入れ、生活費、雇うなら給与は売上が立つ前に出ます。
Q18. リースのコピー機は初期に入れますか?
リース関連として初期の検討項目です。月額を経費側に載せます。
Q19. 未経験でも同じ表ですか?
項目は同じです。稼働人数は今の速度で置きます。
Q20. 一括の総額が欲しいです。
席数・家賃・機器・人数が違うため一律額は出しません。
Q21. 初月を年平均で置いてよいですか?
よくありません。1行目は現金が出る側です。補助金を1行目に足しません。
Q22. 閑散月も繁忙月と同じ売上でよいですか?
よくありません。返済が閑散月に割れます。人数を低く置きます。
参考文献・出典
- サン・ティトル美容経営ラボ「サロン開業マニュアル(2026年改訂版)」
- 猪越理恵プロフィール(サン・ティトル株式会社 / サン・ティトル ビューティーアカデミー)
関連記事
監修:猪越理恵(サン・ティトル株式会社 代表取締役 / Chief Beauty Officer、サン・ティトル ビューティーアカデミー校長。美容キャリア30年、指導歴17年以上。講演・講義を含め5,000人以上の人材育成に従事。プロフィール)
サロン開業・メニュー開発・人材育成の相談はお問い合わせへ。
